「優性・劣性」から「顕性・潜性」に

 遺伝学用語の“dominant”、“recessive”の訳語は、これまで約100年間にわたり「優性」「劣性」が用いられてきました。あくまでも遺伝子の性質の現れやすさを示す用語で、それ以上の意味はありません。
 しかし、例えば賢い親から賢い子供が生まれること、すなわち優れた遺伝因子がそのまま子へ伝わることを優性遺伝、そして親の持つ悪い形質を子供が受け継ぐことを劣性遺伝とするような、形質そのものの優劣を示しているという差別・偏見を助長しかねない誤解を招いていることが指摘されています。
 そこで、2017年9月11日に、日本遺伝学会は、dominant/recessiveの訳語を「優性・劣性」から「顕性・潜性」へ変更するなど、遺伝学用語の改訂を提案しました。

 ただ、この用語改訂に関しては,単に遺伝学のレベルではなく、医学,教育,社会等の幅広い分野に影響を与えることが目に見えていますしから、関係各所、特に医学関係へのコンセンサスは欠かせません。
 というわけで、日本医学会は2017年12月に医学用語管理委員会の下に「遺伝学用語改訂に関するワーキンググループ」を立ち上げます。そこで論点整理を行い、分科会(日本○○医学会みたいな医学系の学会のことらしい)からの意見と、パブリックコメントを集め、2018年12月11日にシンポジウムを行ったものの、賛否は拮抗

 そうこうしているうちに、2019年7月8日に,日本学術会議から,「高等学校の生物教育における重要用語の選定について(改訂)」という「報告」が公表。この中で重要用語の「語名」として「顕性」「潜性」が取り上げられ,「優性」「劣性」が別名・別表記として示されています。
 こうなると、教科書の出版社は今後、「顕性」「潜性」に書き換えざるを得ないかと思います。この状況で「優性」「劣性」を通すのは、「新しい科学の進展に対応していない」と採択関係者に思われると営業的に苦しいし、その前に検定が通るか疑問です。実際、令和3年度版の中学理科の教科書5社は全てすでに、「顕性(の形質)」「潜性(の形質)」で表記されています。(「優性」「劣性」は注で説明しています)

 そして2020年1月、日本医学会の遺伝学用語改訂に関するワーキンググループも推奨用語としては 4 文字で「顕性遺伝」「潜性遺伝」とする案を提示、パブコメや、各方面への確認等、更に幾つかのプロセスを経て最終決定になるでしょうが、基本的にここまで来て「優性」「劣性」のままでいくとか、ひっくり返ることはないでしょう。

ちなみに、教育新聞での読者投票では賛成84、反対59で変更賛成派が多い結果となっています。
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