【理科教育法】 デューイの問題解決学習とは

理科教育法というよりは教育心理学の範疇なのですが、理科教育法を学ぶにあたってやっぱり知っておきたい前提知識なので、取り扱っておきます。

問題解決学習について。

小学校で「問題」に相当する用語が中学では「課題」となっていたりしてややこしいのですが、とりあえず一般的に言われている表記「問題解決学習」という表記で行きます。

問題解決学習はアメリカの教育学者のジョン・デューイ(1859-1952)の学習理論です。

文字通り学習者が問題を解決していくことで学んでいくやりかたです。ここでいう「問題解決」は単に先生から与えられた問題に対して解決する(答えを出す)という話ではなく、日常生活の中から問題を見出すことからはじまり、課題を立て、仮説を設定して、その方法を考え、実際に検証して、その結果から考察して結論を出す一連の流れです。

その過程を経験させることで知識やスキルを身に付けていく、すなわち「なすことによって学ぶ Learning by Doing」経験を重視した学習です。

子供中心、経験中心のデューイの教育思想は進歩主義教育とよばれます。
ちなみにデューイはシカゴ大学に付属の実験学校(デューイ・スクール)というのをつくり、そこで実践します。

さて、どうでしょう。子供中心の経験主義…一見理想的に見えるじゃないですか。
でも実際に令和の中学校で、指導要領はそのままに、すべての教科をこのやり方で1年間授業を進めるとどうなるでしょうか。

そう、まず一つ思いつくのが「教科書が終わらない」。学習者の発見を「待つ」必要があるため、実施に多くの時間が必要になります。時間という点では、学習者によって短時間で解決(発見)することもあれば、長時間かかる(もしかしたら発見できない)ことも考えられます。そしておそらくは解決(発見)までの時間はランダムというか運によるものもあり、指導者側がどれくらい時間がかかるか予想がつきにくいのではないか、と考えます。

たまに「教育とは『教える』のではなく『待つ』ことが大切だ」とご高説を垂れる方がいらっしゃいますが、そのような方には、ぜひ一度、「時間」という資源が限られている現場に来ていただきたいと思います。
どの教科でもよいですので、1年間授業を持っていただき、『待つ』やり方で教科書1冊終わらせて(もちろん生徒の学力もそれなりにつけたうえで)いただきたいと思います。
あるいは、運動会や合唱コンクールまであと数日なのに全くまとまらないクラスに担任として入っていただき、『待つ』ことで、当日にクラスが一団となって活躍するようご指導賜るのでも結構です。ちなみに先生が「待った」あげくに当日失敗したとき、生徒たち、特に本当はクラスでまとまりたかった生徒たちは、先生のことを「自分たちがまとまるのを待ってくれた先生」とは決して思わず、「あの先生は何もしてくれなかった」という反感が残ること請け合いです。その後生徒や保護者に不信感を持たれたまま担任を続けていくのも鋼のメンタルを要するところです。


もう一つ忘れちゃいけないのが、日常生活や経験の中から問題を発見する、つまり学習がスタートするということ。これは逆に言うと子供にとって身近でないことは学習の対象外だということ。
理科でいえば原子や分子、社会科だったら行ったことのない国や政治のしくみ、数学だったら二次方程式の解の公式や円周角の定理など、経験しないものは学べない、学ばないとなるとどうしても学習内容に偏りが出てきてしまいます。人参食べない偏食の子供は健康に大きくなれないように、原子や二次方程式を学ばない偏学の子供は、将来本人にとって、そして社会にとって困ったことにならないでしょうか。

また、経験に基づく知識だけを集めても、穴ぼこだらけでまとまった(系統だった)学問とはなりにくいでしょう。問題解決学習だけですべてを進めようとすると、系統だった学問の全体を理解するにあたってはむしろ非効率的といえます。

そんな心配があるなか、1957年10月4日にある「事件」が勃発するのです。
いや、事件ではなく、当事者にとってはむしろ祝うべきことなのですが、アメリカにとっては「事件」といいたくなるできことが起こったのです。

次回「ブルーナの発見学習とは」に続く。



問題解決型学習・PBLの流れで、たまにラーニング・ピラミッドという図が登場することがあります。なかなかよくできていて誰かに教えたくなりそうなのですが、これはどうもメラビアンの法則と双璧をなす誤謬らしいということは、結構有名な話ですので(知らない人は知らないようですが)、ドヤ顔で使うと「アチャー」と思われますから気をつけましょう。(で「アチャー」と思う人に限って、思うだけで本人に指摘してくれないんだな。)

土屋耕治.ラーニングピラミッドの誤謬――モデルの変遷と“神話”の終焉へ向けて.人間関係研究.2018;17:55-74.
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