実験 鉄と硫黄を結び付ける

中学校理科の定番実験のひとつ、
鉄と
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硫黄から
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硫化鉄を作る化学変化です。
新指導要領から「化合」という言葉が消えたので、「結び付ける」とか言い換えが面倒です。

そしてこの実験は事故が多い実験です。実験中に発生する有害な気体を吸って具合が悪くなることがあります。
→Check it out! 参照

そのため、換気は必須ですが、(中高一貫でない)プロパー中学校の場合ドラフトもないのが普通で、換気扇を回したところで十分とは言えないのが現状ではないでしょうか。かといって窓を開けると、ガスバーナーの炎が揺れて危ないだけでなく、風下にいた生徒が発生した空気を吸って気分が悪くなってしまったという事故事例もあります。

このため事故のあった学校を管轄する教育委員会では「この実験をするな!」という通達を配下の学校にしたという話も聞きます。

また、指導要領上は「2種類の物質を反応させる実験を行い」とあるので、必ず鉄と硫黄の組み合わせでなくてはいけないわけではありません。そこで教科書もこれに代わる実験はないかとどこの会社も長年検討しているとは思うのですが、2種類の物質を反応させる実験として、やはり鉄と硫黄に勝るものはないため、ここまで続いているのが現状といえましょう。


ちなみにここで生徒の具合を悪くする気体は硫化水素ばかりが目立っていますが、硫化水素は工夫次第で少なくとも生徒の具合が悪くならない程度に発生量をおさえられると踏んでいます。(だからと言って甘く見てはいけませんが)

この実験での異臭で具合が悪くなった原因の気体はおそらく硫化水素よりも二酸化硫黄のケースが多いのではないかとにらんでいます。二酸化硫黄は低濃度でも呼吸器を刺激し、せきこみやすいという具体的な症状がでてきます。特に喘息の人は敏感です。
二酸化硫黄は、硫黄と鉄の混合物を加熱するときに、硫黄が鉄と反応するのではなく、空気中の酸素と反応する、つまり燃焼することで発生します。したがって、いかに硫黄を鉄と反応させて、酸素(空気)と反応させないかというところがポイントとなるでしょう。


さて、教科書ではとりあえず5社中4社が鉄7gと硫黄4gを2つに分けて一つを加熱し、もう一つを加熱しないとしています。鉄と硫黄の質量比7:4は原子の数が同じになるようにという配慮なのはお分かりだと思います。
ちなみに、7:4のバランスが崩れるとどうなるか。鉄の方が多ければ、未反応の鉄が磁石にくっついてしまうので、加熱前後で磁石への付き方の区別がつかなくなってしまいます、一方、硫黄が多ければ、加熱時にSO2ができるリスクが増えてしまいます。やっぱり7:4がベストバランスなわけです。
とはいえ、7gと4gはちょっと量として多い感じもします。測りやすいというのはあるのでしょうが…。今回は半分の鉄3.5g、硫黄2.0gにしてみました。

黄色の硫黄と黒い鉄ですが、混ぜると灰色になります。よく混ぜましょう。
ちなみにこの実験の成否(二酸化硫黄があまり発生せずに安全にできるか)は、ここできちんと混ぜられるかにかかっているように思っていましたが、生徒実験の様子を見てみると、かなりしっかり混ぜていても硫黄が燃えていたケースもしばしばみかけますので、他にも成否を分けるポイントがありそうです。
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試験管に入れる方法と、アルミニウムはくにキャンディのように包むやり方があります。試験管に入れて加熱すると、その試験管は熱で変形してしまい、もう捨てるしかなくなります。それはもったいないということで、今回はアルミ箔で包むやり方でいきます。
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ガスバーナーのすぐ横に砂皿を置きます。
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加熱して赤くなったらすぐに砂皿に置きます。
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赤くなった部分は発熱しています。その熱が隣の未反応の部分が反応するきっかけとなります。そしてさらに隣に…と改めて加熱しなくても砂皿の上で勝手に反応が続きます。
ちなみに、ここで青いほのおが出てくるとアウト。それ硫黄が燃えています。
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反応終了。燃え残ったアルミニウム箔をとると、黒くなっています。鉄と硫黄が結びついて、硫化鉄になったのです。
Fe + S → FeS
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ちなみに砂皿に置かずに、途中で実験机の上に落としてしまうと、このようになってしまいます。熱で表面が傷んでしまっているので、雑巾などでふいても、二度と元に戻りません。
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加熱後(左)と加熱前(右)。加熱前のものしか磁石につきません。
加熱の前後で性質が違う、ってことは、物質が違う、化学変化が起こったということですね。
加熱前は鉄が磁石につきましたが、加熱後の硫化鉄は磁石につかないのです。
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もう一つ、加熱前後の物質で性質が違う例として、塩酸を加えたときに発生する気体のにおいがあります。
加熱前の方に塩酸を加えても臭いはありません。鉄が塩酸と反応して水素が発生しますが、水素は無臭です。
Fe + 2 HCl → FeCl2 + H2
ちなみに試験管にいれて10分ばかりほおっておくと早速さびてしまいました。しかも試験管にこびりついて捨てるしかない(泣)。
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加熱後の方は塩酸を加えると腐った卵の臭い(腐卵臭)の硫化水素が発生します。
FeS + 2 HCl → FeCl2 + H2S
Sを消したら、先ほどの鉄に塩酸で水素が発生する化学反応式そのままですね。


硫化水素の発生量を抑えるために
*この操作を班ごとにやるのではなく、教師がやって、においを生徒にかがせに回る。
*硫化鉄は長い棒のまま使うのではなく、ひとかけらとって試験管に入れる。
*塩酸の濃度は2%程度で十分。普段使っている塩酸はもっと濃いもののはずなので、薄めて使う。
*塩酸はスポイトで数滴たらす。塩酸の入った試験管に硫化鉄を入れるのではない。
*においを嗅ぐときは手で仰ぐことを確認。におわないな?と思って思わず鼻を近づけると、その瞬間にやられることがあることも注意しておく。
*匂いを嗅ぎ終わったら薄い水酸化ナトリウム水溶液を加えてドラフトや室外に退避させる(硫化水素は水によく溶けるが酸性の溶液にはほとんどとけない)。ただし、その水を流すとき、また硫化水素のにおいがするので注意)

未反応の鉄と硫黄は硫化鉄にして廃棄します。

実験後に,アルミニウムはくの包み(これが鉄と硫黄の混合物であったのか,加熱後の硫化鉄であったのかは不明ですが)
を「可燃物のゴミ箱」に廃棄したところ,ボヤ騒ぎになったと言う事例もあります。ご安全に。

Check it out!
教育現場での理科の実験中の事故について
リレーショナル化学災害データベース …硫化水素をキーワードにして検索してみよう
中学の理科実験、体調不良で搬送相次ぐ 有毒の気体吸い
2.板橋区立中学校における理科実験中の事故について
鉄と硫黄の混合物の取り扱いについて
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