林雄司 「世界のエリートは大事にしないが普通の人にはそこそこ役立つビジネス書」(前編)

デイリーポータルZという娯楽サイトがあります。どういうサイトか説明しにくいので実際にそちらを見ていただくとして、このサイトの編集長が書いたビジネス書です。

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で、この本には仕事のやり方の工夫がたくさん紹介されていますが、凡百のビジネス書と違うのは、根底にこの考え方があるからではないかと考えています。

それは、好きなことを仕事にしてしまったのと、好きでもない作業はなるべく努力しないで済ませているからだと思う。どちらも根っこにあるのは、「なるべく働きたくない」という気持ちである。(p.4)


自分の場合、たしかに好きなことを仕事にしたはずでした。しかし、経験と年齢を重ねて組織の中での立場が変わるのに伴い、仕事の質と量も変化してきています。次々に降ってくる好きでもない作業をなるべく努力しないで済ませようとしても、絶対量が多いので結局は相当の努力を要するというか、肉体的のみならず精神的な疲労をもたらしているという現状です。なので「隣の花」もしくは「隣の芝生」だとは思いながらも、こういう気持ちで仕事できるとしたら、ぶっちゃけうらやましい。
なので、この本から学べる何かがあるにちがいない、ということで読んでみました。

気に入ったメソッドをいくつか取り上げます。




メソッドその5 「かっこいいビジネス用語」を駆使する
計画→マイルストーン、ロードマップ 仕事→プロジェクト 証拠→エビデンス
など、日常用語をビジネス用語に書き換えるとそれらしく見えるというメソッド。
特に注目すべきは、「興味ない」「流行ってない」「古い」「マイナー」「忘れてました」のようなどちらかというと否定的な言葉。ビジネスでは当然、後ろ向きな表現は許されない。
そこで

興味ない→好きな人にはたまりませんね
流行ってない→静かなブーム
古い→レガシー
マイナー→ロングテール
忘れてました→可及的速やかに着手します(pp.25-32 から抜粋)


いいなぁ。物は言いよう。
「○○の件はどうなった?」「(ヤベ、まだやってない!)はい、可及的速やかに着手します!」
なるほど、「静かなブーム」は特に流行してもいないものを流行させたいときに使える言葉だな、逆にテレビや雑誌で「静かなブーム」とかあったら、それは流行っているのではなく、誰かが流行らせたい、一種のステマの可能性があるなと。




メソッドその7 「とりあえず言っとけワード」を駆使する

 何か失敗したときの言い訳は「コミュニケーション不足」がいちばん汎用性が高い。…(中略)…
 スキル不足だと決定的にまずい感じがするが、コミュニケーション不足なら特定の誰かが悪いわけではなくてただ不運だったという空気になるのがいい(ほんとうは原因があるんだけど) (p.16)


 あははは。たしかに。ただ「再発防止策」まで求められそうな案件の言い訳に使うと、場合によってはやたらめんどくさいコミュニケーションを義務化されそうなので注意が必要かも。そというか、参加者に「長い時間やったけどほとんど意味がなかったな」と思わせるような「会議」というコミュニケーションを過剰にやってるのに「コミュニケーション不足」って…



メソッドその20 お詫びメールにはコツがある

・慌てる
例)「す、すいません!急いでお見積書をお送りいたします。」
 慌ててる感じを出してみた。怒りに取り乱しているように見えないだろうか。しかし冷静に考えれば「す、すいません」と打ってるわけで慌てているどころか、そこにあるのは「慌ててる感じを出してやろう」という計算である。
改善案)「すいませn急いでお見積書をお送りいたsます」
 慌てて変換すらおろそかになっている雰囲気を出した。こっちの方がリアルだろう。
 添付ファイルを忘れたことにして、再送するまでに急いで作るというパターンもある。だが添付がついていないことでより一層怒りが増す可能性もあるのでリスキーである。
 返信メールをタイマー設定して夜中の2時に送り、忙しさをアピールするのも一興である。


「す、すいません」という表記はまさにそのように打つ余裕があるので実際は慌てていないということが相手にばれてしまいます。なのでこのテクニックはまじめなときに使うのではなく、例えば困っている人に助け舟的に資料を提供するときに、「べ、別にあんたのためにこの資料見せてあげるんじゃないからね」というメッセージを添えたりするような、ちょっとふざけて真意を伝えるような使い方ができます。(ちなみに口頭でも使えます。「べ、別にテストに出すからこの問題やるんじゃないからね、たまたまよ、そう、たまたま」とか言ってやった問題をそのままテストに出すとか。フェイントで出さないときもあるけど)

 あと、余裕のなさをアピールするのには、変換がおろそかなケースでは漢字の誤返還をするという手もあります。

 そういえば昔、ある研究をしていた時、こんなことがありました。研究の中心となる人からMLで1か月くらいの間に各小グループにこれをやってくれという指示があって、小グループ長だった私はメンバーを集めて指示から数日でその作業をまとめてMLに返信しました。これだけ早く作業を終えたのは私のグループだけだったのですが、さらにその数日後、指示の内容に大きく変更が入りました。そうすると立場逆転、早く作業を終えた自分たちのグループだけがやり直しをしなくてはなりません。
 普通に変更の指示を出した人に文句を言うのが筋かもしれませんが、諸般の事情で、ストレートに文句を言うのも角が立ちます。下手をするとこちらが悪者にされてしまう危険性もあります。それよりは手出しをせず不満をためている様子を間接的に知らせてプレッシャーをかけるという戦略をとりました。将棋でいえば「王手するより縛りと必至」みたいな。そこで、

○○グループのメンバーの皆さんへ   
この前の指示の内容の変更のML見た?何アレ?
ひどいよな~。せっかくうちらのグループが早く済ませたと思ったら、やり直しかよ!
ふざけんな! (ノ`Д)ノ彡┻━┻∴ 


って感じの怒りのメールをグループメンバー宛のメールではなく、間違えたふりしてわざとMLに流しました。で、次に

皆さま 
大変申し訳ありません。
先ほどはグループのメンバーだけに当てたメールを誤って全体のMLに流してしまいました。
お手数ですが削除をお願いします。
以降気をつけます


みたいな丁寧な文体でメール誤送信のお詫びをMLにしれっと流しました。
 そしたら、いろいろ他のグループの人たちに同情してもらえました。
 ただ、私の周囲の人の中には「あの誤送信はわざとじゃないか」と見破っていた人も何人かいました。
 その時はお茶を濁しましたが、そうです、わざとです。よくわかりましたね。

 話を戻して、ファイルの添付忘れのふりをしてファイルを慌てて作るのはアリですが、その後作ったファイルは、タイムスタンプを添付忘れメールの送信時間より前に書き換えるのを忘れてはいけません。また、タイマーで夜中に送信時間を設定するときは、ファイルのタイムスタンプを送信時間の4~5分前にしておくと、相手は「ああ、夜遅くまでファイルを作って、送ってくれたんだな」と、実際にはやっていないがんばりを認めてくれます。




メソッドその28 催促メールはしれっと書く

 原稿をなかなか送ってくれないライターには、催促することになる。お詫びよりも面倒なのが催促だ。嫌味にならないよう、でも相手を動かさなければならない。
・催促してるみたいですいません(してるんですが!)
・首を長くして待ってます(もちろん比喩で)
・行き違いだったら申し訳ありません(ちょつと慇懃でしたね)
・○○さんの家の方を向いて待つてます

 など、なるべく冗談っぼくして書いている。
(中略)
 なぜ僕がこんなに原稿の遅れる人に寛容かというと、僕もライターとして書いてる仕事では催促されることがしょっちゅうだからだ。
(中略)
 そう、人にやさしく催促されると自分もやさしく催促されるのだ。

 文末も「してください」ではなく「~していただけると助かります」「~していただけると幸いです」「~していただけると幸甚に存じます」「~していただけると嬉しいです」「~してもらえると最高です!」「~してもらえると喜びで震えます」とバリエーションをつけて攻めている。もちろん実際に震えることはない。

催促している相手がSNSに書いて遊んでいるときは黙って「いいね」したり、ファボ(お気に入り登録)して圧をかけている。たいしておもしろくなくてもだ。
 mixiが流行っていたころは10分おきに足跡をつけていた(本当に僕はやさしく催促しているのかどうか不安になりますね)。(pp.95-97)


 きっと借金の取りたてもそうなんだろうけど(プロの方は除く)、こっちに正当な債権があって、相手に当然の債務があるときでも、その債務を遂行してもらうにあたっては、債権者側が下手に出ることが多いです。
 一見、債権者の当然の権利なのだから、もっと堂々と命令してもいいような気もしますが、債務を迅速に履行するか否かは、法的にはともかく、現実的には債務者の胸先三寸にあるわけです。もっというと、債務を履行しなくて困るのは、むしろ当てが外れてしまう債権者の方です。
 なので債権者は、「義務を果たせよこいつ」という気持ちをぐっと抑えて、気持ちよく迅速に債務を履行してもらうことが結局自分の利益になるため、原稿は取り立てるほうが、借金は貸した方が、妙に下手に出るわけです。むろん、そのやり方でうまくいかなければ、作戦を変えるわけですが…。

 自分の場合、SNSは今はFacebook「理科とか苦手で」のページで、ブログの更新情報を自動的に配信させているだけで、個人アカウントでは全く活動していないのですが、いろいろ発信していた時には、「〆切を過ぎた原稿があるとき」と、「体調が悪くて仕事を休んでいるとき」は、更新を止めていました。一度ミスって〆切を過ぎた原稿があるのにFacebookを更新したとき、取りたて担当の編集の方から「楽しそうですね(^^)」とコメントをいただいてゾッとしたことがあります。

 なお、このブログについては、書くネタがあまりにも多く、毎日更新していてもさばききれない状態です。そのため、記事を書いてから更新までに何週間かラグがあって情報の鮮度が落ちまくっています。例えばこの記事は2018年2月6日に更新されたものですが、実は2017年12月29日に書いています。それを1記事ごとに順番に並べ(飛び入りや先送りなども多々ありますが)、平日(以前は毎日)の0時に自動的に更新されるようにセットされているので、「片頭痛で休んでるはずなのにブログは更新してやがる(怒)」というのは大きな誤解です。ちゃんと頭痛でのたうち回っています。痛いんだからほんとに(泣)。



まだ半分くらいなのにここまでで結構な量になってしまったので、努力しないで残りは後編にかきます。
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