企画展「江戸の花だより」 Ⅱ植物図譜の世界

Ⅱ植物図譜の世界 
Ⅱ-ⅰ描かれた植物


古今要覧稿 特065-0001
屋代弘賢編 文政4年~天保13年(1821-1842)成立
 幕臣の屋代弘賢が編纂した百科全書。器材、草本、禽獣等に分類し、項目を立て、日本や中国などの文献から関連する記事を抄出し、必要に応じて絵図や解説を加えています。完成したものから順次、幕府へ献上し、計560冊を進献しましたが、天保15年(1844)の江戸城本丸火災の際に焼失しました、展示資料は、明治期に内務省が購入した弘賢旧蔵本です。全179冊。. 内務省旧蔵。
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あか松 草木1~4 15/71
犬櫻 草本18下 13/36
紅梅 草木28~31 49/93
楓 草木42~46 26/79
茶山花 草木71~74 66/91


古今要覧稿 ヨ031-0001
屋代弘賢編、国書刊行会 明治38年(1905)刊
展示資料は、明治期に国書刊行会から刊行されたもの。複数ある『古今要覧稿』の写本を校訂し、活字化して刊行されました。展示部分は『古今要覧稿』の凡 例で、弘賢が本書の編纂に至った経緯が記されています。この凡例は、岩崎文庫所蔵(現在は静嘉堂文庫所蔵)の『古今要覧稿』のみに記されています。これ によれば、多くの知識を正確かつ効率よく得るためには類書(分類体の百科全書) が必要であるが、我が国にはこれが存在しないことから、編纂を決意したと述べら れています。全6冊。枢密院旧蔵。
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現代語訳:筑州(新井白石)のような博識をもってしても、ものによってはわからないことも少なくない。それは我が国に類書(分類体の百科全書)がないからである。もし歴代の沿革を集め、参考として備えておけば、期待通りの結果が得られるはずである。類書を作る力は、才能や学識はさておき、編集作業ひとつに集中することに尽きる。これこそ私が奮起してこの書を作った理由である。


御書籍来歴志 ごしょじゃくらいれきし(『元治増補御書籍目録』附録)  219-0913
書物華行(渥美忠篤 ・塩野谷景朝・榊原好行・山田安増・石川政勝)編  慶応2年(1866)成立
紅葉山文庫の蔵書解題。 文庫の目録(『御書籍自録』)を編纂した際に附録として作成されました。
主な貴重本を選び、来歴を収録しています。展示資料は元治元年~慶應2年(1864-1866)にかけて編纂された、 紅葉山文庫の最後の目録である『元治増補御書籍目録』所載のものです。
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【翻刻】 古今要覧稿 文化中、奥御右筆所詰屋代太郎弘賢 命ヲ奉シテ編集スル所ニシテ本朝ノ類書ナリ。 部門ヲ十八ニ分チ、全部壱萬余冊ト云フ大業ナルヲ以テ、先ツ毎歳稿本ヲ以テ 御覧ニ備フル所ノ本、凡数百冊、天保辛丑弘賢没ス、故ニ未卒業。ソノ御覧ニ経ル者、常ニ奥ニ停メラル。天保十五年炎上ノ砌みぎり、焼失シテ欠残、纔わずかニ四冊、御庫ニ収メラル。
【解説】 「古今要覧稿」(屋代弘賢編)は、幕府へ献上され、将軍の上覧を経て、江戸 城内で保管されていました。そのため、天保15年(1844)に江戸城本丸御殿が炎 上した際にほとんど焼失しましたが、わずかに4 冊が焼け残り、紅葉山文庫に収 められたといいます。

絵本野山草  197-0032
橘保国著 宝暦5年(1755)刊
 大坂の絵師橘保国 (1715-'1792)が狩野派の画法を用いて描いた草木画集。 本書は、画家志望者を対象とした絵手本(絵の描き方を習うための教材)の一つです。 保国の父守国は初め狩野派の門人鶴沢探山に師事しましたが、のちに絵手本の版行を生業としました。 保国は父の跡を継ぎ、画家として活躍しました。展 示資料は明治16 年(1883)の再刊です。全5 冊。
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雑草譜 197-0140
曲直瀬まなせ正貞著
イネ科の植物の図集。彩色写生図に、名称、産地、形状等を記しています。植物の多くは尾張国(現在の愛知県)産です。序跋等がないため、成立事情は不詳です。著者の曲直瀬正貞(? -1858)は、江戸幕府の医官を務めた曲直瀬養安院家の人物で、本草学にも通じていたとみられます。全2 冊。内務省旧蔵。
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諸国草木図 197-0138
小林豊章著
九州地方を中心とした諸国の植物図集。幕臣の著者は、寛政9年(1797)に信州、同10 年と同12年には長崎へ出張を命じられ、その際に諸国で植物を観察し、 写生しました。写生した植物の中には、琉球やオランダから輸入した植物なども 含まれています。写生図には、植物の名称、写生日時、場所等が注記されています。全2 冊。農商務省旧蔵。
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蝦夷草木譜 197-0016
小林豊章著
蝦夷地および樺太の植物に関する図集。著者は、寛政4年(1792)に最上徳内の樺太調査に参加しました。その折に、蝦夷地や樺太の草木を写生して本書を 作成しました。写生図には、写生日時、場所、現地での名称や利用方法などが注 記されています。全1 冊。内務省旧蔵。
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Ⅱ-ⅱ植物図譜と本草学・植物学・博物学

庶物類纂図翼 重要文化財 特054-0002
戸田祐之著 安永8 年(1779)成立
 幕臣の戸田祐之が描いた薬草類の写生画集。『本草綱目』(李時珍著)所載の植物を写生しています。本書の献上を幕府へ願ったところ、『庶物類纂』(稲生若水・丹羽正伯編)の参考図録として有用であるとの評価を受け、『庶物類纂図翼』の書名を与えられ、安永8年に紅葉山文庫に収蔵されました。平成8 年(1996)に『庶物類纂』とともに国の重要文化財に指定されました。全28 冊(添書含む)。紅葉山文庫旧蔵。
龍膽/俗名・里牟多宇(りんどう) 8/37
芍薬 10/24
白菊 6/28


庶物類纂図翼添書  重要文化財  特054-0002(3-5/7) 冊次28
植村左源次・植村左平太.田村元長著 安永8 年(1779)4 月成立
 安永7 年(1778) 4 月、戸田祐之スケユキが薬草の図(『庶物類纂図翼』)を幕府へ献上 したいと願い出た際、幕府の本草学者である植村左源次、植村左平太、田村元長の三人は、その図が学術的に有用であるかどうか、調査するよう命じられました。 その報告書が本資料。提出された薬草の図は、『本草綱目』の記述と一致しない植物もあるが、その部分を訂正し、『庶物類纂』に添えて収蔵すれば、薬草類の形状の確認の際に有用であると述べています。さらに、『庶物類纂』に添えるため、 『庶物類纂図翼』と名付けたと記述されています。紅葉山文庫旧蔵。


庶物類纂 重要文化財 特054-0001
稲生若水 ・丹羽正伯編  延享4 年(1747)成立
 江戸時代中期に成立した日本の本草書。動植物・鉱物の中から薬効のあるもの を選んで分類し、それぞれについて中国の文献から関係する記事を収集して記した書です。元禄10年(1697)、本草学者の稲生若水は加賀藩主前田綱紀から命を受け、『庶物類纂』の編纂に着手します。しかし、正徳5 年(1715)、若水は作 成途中で病死し、のちに藩主綱紀も死去したことにより、事業は中断。それを惜しんだ8 代将軍徳川吉宗は、若水の弟子である丹羽正伯らに編纂事業の継続を 命じ、延享4 年に完成しました。全1054 巻(465 冊)。紅葉山文庫旧蔵。
花属 巻64-66 表紙
龍膽 29/57
【解説】
展示資料は龍謄について記した部分です。リンドウの特徴や効能が記されています。リンドウの根は「四肢疹痛」を治す効果があり、根を生菱汁につけて一晩置き、煎って乾燥させ、水に煮出して服用するとあります。


御書物方日記 257-0002(97/161)
紅葉山文庫の管理を担った書物奉行の執務日記。現存する日記の期間は、宝永3 年(1706)から安政4 年(1857)まで約150 年に及びます。内容は、蔵書の収 集・管理・出納・修復、施設の管理・補修、目録の編纂、文献調査、奉行や同心 の人事記録など、多岐にわたります。展示部分は安永8 年(1779)4 月27 日付の記述で、『庶物類纂図翼』の文庫への収納に関する記事が記されています。全 225冊。
【翻刻】 稲葉越中守殿御逢可被成由円碩申 聞候間、奥新部屋江相廻り候処、越中守殿 御逢被成、今度、小普請戸田要人、 庶物類纂図翼差出、御留ニ相成候ニ付、 御蔵へ納申候、前々より有之候庶物類纂ニ差添置可申旨、尤、拙者申候者本立ニ候、 追付、岡部河内守面談之上、右御書物相渡可申由被申聞候、即刻河内守へ遂対談、請取、御蔵へ納置候庶物類纂ニ差 添置申候、尤、二箱五帙二十五冊、別録二冊、 添書一冊
【解説】 書物奉行は稲葉越中守(名は正明。側衆)から、戸田要人(祐之)が『庶物類纂図翼』を将軍へ献上し、お手元に留められることになったので、前々から紅葉山文庫に所蔵している『庶物類纂』に差し添えて置くように指示されます。書物は岡部河内守(名は一徳。小納戸頭取)へ面談の上、受け取るようにとの指示だっ たので、早速、河内守に会い、『庶物類纂図翼』を受け取り、書物蔵に収蔵されている『庶物類纂』に差し添えて置いたことが記述されています。

本草図譜 
岩崎灌園著
幕臣で本草学者の岩崎灌園が著した植物図譜。約2000 種の草木を収録しています。著者は本書編纂の動機として、内容的に優れた本草書であっても、図は簡略な場合が多く、それに不満を感じていたことを述べています。文政11 年 (1828)に草稿が完成し、2年後の文政13年に一部が木版手彩で刊行されました。 しかし、刊行したのはこの時だけで、のちには原本の模写を希望者に有料で配布 しました。本展では文政13年の刊本(昌平坂学問所旧蔵本、全4冊)と灌園自筆写本(内務省旧蔵本、全72 冊)を展示しております。

昌平坂学問所旧蔵 196-0195 (29/43) 木版手彩 輪郭を木版で印刷後、手作業で彩色を施したもの

内務省旧蔵本 196-0190 写本 手作業で模写したもの。 
マンリョウ ヤマグルミ
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本草綱目 別042-0008
李時珍著 附図:李建中編 明(中国)の万暦24年(1596)刊
中国明代の本草書。薬物を中心としながらも、博物学的内容に富み、日本の江戸時代の本草学研究に大きな影響を与えました。
日本への最初の渡来は慶長年 間(I 596-1614)で 、儒学者の林羅山が長崎で入手し、徳川家康に献上したといわれています。その後も中国から頻繁に輸人されるとともに、和刻本(日本で彫刻し、刷られた本)も多数刊行されました。展示資料は伝本が少なく希少な初版本。初版本は金陵(現在の南京)で刊行されたことから、金陵本とも呼ばれます。 全26冊。
大豆(ダイズ)、小豆(アズキ)、胡豆(ソラマメ)、豌豆(エンドウマメ)
狼尾草(チカラシバ)、薏苡(ハトムギ)、罌子粟(ケシ)
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本草通串証図 196-0133
前田利保編 嘉永6 年(1853)序
 越中富山藩の第10 代藩主前田利保の命で編纂された植物図譜。利保が先に著した本草書である『本草通串』の付図として編まれました。図は富山藩の絵師 が描いています。全5冊ですが、当館で所蔵しているのは巻1、巻2の2冊のみ です。「本草通串謹圏」と墨書された木箱に収められています。農商務省旧蔵。
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花彙 197-0037(19-21/29)
島田充房、小野蘭山著 宝暦9年(1759)、明和2年(1765)刊
 植物の写生図と解説が記された植物図鑑。宝暦9 年に充房が1巻と2 巻を出版し、宝暦13年に蘭山が残りの6巻分を完成させ、全8巻8冊として、明和2年に刊行しました。精度の高い写生図が描かれており、葉の表面を白色、裏面を黒色で描くという工夫を施しています。展示資料は昌平坂学問所旧蔵本で全5 冊、3 巻3 冊分を欠いています。
【解説】菴羅果は正確にはマンゴーを指しますが、ここではカリンの類として記されています。資料中の大和談山とは、奈良県にある談山神社のことです。


草木図説  196-0186
飯沼慾斎著 安政3 年~文久2 年(1856-1862)刊
 西洋の植物分類体系を導入した植物図鑑。リンネの24 綱分類に従って植物が 配列され、観察に基づいた写生図と解説から成り、1200 種以上の草木を収録し ています。葉の表を黒色、裏を白色で描き分けており、『絵本野山草』や『花葉』 の影響がみられます。慾斎は顕微鏡も活用しており、花の構造の精密な図は、顕微鏡による観察の成果といえるでしょう。全20 冊。
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植学啓原 197-0198
宇田川格養著 天保5年(1834)刊
 我が国最初の体系的な西洋植物学の概説書。ラテン語「botanica」を「植学」と 訳していますが、これは現在の「植物学」に相当します。本書は、リンネの24 綱目 の分類法、植物の形態と生理などを解説しています。また、巻末に「植学啓原図」 として、植物の形態図、花粉の顕微鏡図、発芽の図などを木版色刷で掲載して います。全3冊。文部省旧蔵。
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東京大学小石川植物園草木図説  ヨ470-0013A
伊藤圭介・賀来飛霞編 明治14年(1881)刊
小石川植物園の植物図鑑。明治10 年(1877)に『小石川植物園草木目録』、同 13 年には目録の後編が刊行されており、本書はその図譜にあたります。画の質や印刷の面でも優れており、世界の植物研究者から注目されました。賀来飛霞は本草学者で、伊藤圭介の弟子です。全2 冊。
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訓蒙図彙 210-0003
中村暢斎編 寛文6年(1666)干1」
江戸時代前I切の図解百科事典。天文・地理・衣服・畜獣・花草等に分類し、図に和名と漢名および注記が附してあります。教育的意図のもとに作成され、児童や初心者にもわかりやすく記されていることから、多くの読者を得ました。全10冊, 紅葉山文庫旧蔵。
杏・梅・桃・李(2/15)
牡丹・芍薬・薔薇・棣棠(やまぶき)(12/37)


物類品隲 196-0164
平賀源内編 宝暦13年(1763)刊
平賀源内は宝暦7 年(1757)以来5 回にわたり、江戸の湯島で薬品会(薬種や 物産の展示会)を開催しました。薬品会の出品物2000 種余の中から360 種を厳選し、解説を加えたものが本書です。全6 冊。昌平坂学問所旧蔵。
漢種壇香梅(22/28)
 ココでは蝋梅の一種を指していると思われます。壇香梅は、元来、蝋梅の一種に対する漢名ですが、現在、日本では鬱金花のことを壇香梅といいます。
人参園図(7/28)
『物類品隲』には、附録として朝鮮人参の栽培法が掲載されています。人参を栽培する際には、図のように日覆いがあるとよいと記されています。
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